夏の荷物

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朝、夏の暑さはさながら地獄の釜ゆでのようだった。 結構な広さを持つ一軒家、洋風な造りも熱帯に見えてくる。 そのせいか、いまいち外出をする気分になれない。 室内が暑いのだから外はもっと暑いだろう。 「…………暑い」 頭が茹で上がる朝、それは俺の機嫌を最悪にしてくれる。 着ているゴシックパンクのタンクトップはこれほどとはないまで肌に貼り付き、ベルトで結ばれたズボンは機動力とかを著しく下げる。 また、髪が黒というのもよろしくない。 イライラは頂点なんてとうに越え、ロクな解決方法も浮かばない。 せっかくの夏休みもすっかり昼夜逆転生活。 珍しく朝からなにかしようと思えば灼熱地獄。 ここまでくるとなにかの陰謀を感じないこともない。 別に昼夜逆転生活に文句を言うつもりはないのだが。 なに、夜に異性と楽しむのはやはり当然のたしなみだろう。 「朝まで楽しむというのはあるけど、朝からはないな」 疲れる。 俺は朝が極端に弱いのだからそれは無理だ。 ―――二階の自室から一階のリビングへ行く。 「妹は、いないのか。友達の家に行くとか言っていたな」 いつもはお兄ちゃんお兄ちゃんと抱きついて来るくせに、こういう時は離れるのか。
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