夏の荷物

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渡される紙とボールペン。 この状況下、わざわざハンコを取りに行く必要もない。 俺は渡されたボールペンで紙にサインすると、荷物の前に立った。 「ありがとうございましたー」 業者はトラックに小走りでかけ、颯爽といなくなった。 てっきり部屋の中まで入れてくれると思ったのだが、最近はこんなものなのだろうか。 「優しさにもお金がかかるってか。世知辛いねぇ」 俺は荷物に手をかけ、一気に持ち上げた。 ズシリ、と腰に負担がかかる。 重さは、同年代の女子をお姫様だっこするかのよう。 一瞬、中に人間が入っているかも、なんて我ながらおぞましい想像をしてしまった。 「巻きますか、なんてメッセージはなかったもんなぁ。アニメじゃないんだし、生きたドールが入っているわけないか」 少しアニメの見過ぎだろう。 まぁ、それでも見るのをやめるなんてことはしないのだけれど。 ましてや、そのアニメの主人公はニートだ。 俺は学校にもいってるし、ニートと呼ぶには条件が不足している。
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