それは、かくも美しい。

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  例えば僕が死んだとしたら、貴方は泣いてくれますか?あ、いやいやまだ死ぬつもりはありませんが。貴方を置いていくつもりはありませんが、例えばですすいません。   先日、偶然やっていた安っぽいサスペンスドラマに触発されて言ってみたら、案の定。愛する彼の人の鉄拳を見事に喰らうことになりました。(冗談だったのに) 久しぶりに、の地面の味、ちょっぴりの懐かしさと多大なるまずさに僕は顔をしかめながら起き上がる。(地面がファーストキスでなくてよかった)   クーラーがガンガンに効いた部屋、そのお陰でひんやりする皮張りのソファに腰掛けながら、足を組んで、先程僕を殴った腕を突き出している愛しい人はじっと僕を見て(睨んで)いる。   「あの、」   「何」   「えっと、」   「…」   不機嫌MAXでじっと睨む愛しい人からは殺気しか感じられない。   「…」   「何なわけ、ちゃっちゃと言ってよ」   「すいませんごめんなさい冗談です僕は死にませんおいていきません愛しています」   「息継ぎしたら?」     前言撤回でおねがいします。愛しい人は不機嫌MAX殺気のみじゃありませんでした。 よくみると、肩が震えていました。よくみると瞳が濡れています。(ああ、僕はとんだ失言をしてしまっていたようだ。)   「愛しています」   「ん。」   「愛しています」   「わかった」   「愛しています」   「しつこい」   再びとんできた拳を今度はなんとかよけ、笑う。 愛しい人も。…笑い返してはくれなかったが機嫌は回復したようだ。(そう、この人の愛情表現はひどくわかりにくい。)   僕は、愛しい人の隣。ひんやりしたソファに腰掛ける。愛しい人は、それを見て少し頬を緩める。(実際見てくれは変わらないが、そう思いたい。)   大丈夫です、僕は死にません、貴方を泣かせません。 いや、何時か幸せ泣きはさせてやりますが、そんな冷たい涙をながさせやしません。 僕は貴方より一秒だけ長く生きます。 貴方を看取ってすぐに後を追いましょう。 僕は貴方を一人にしません。     (愛しています)   (あたりまえじゃない)     笑う貴方は、そう。かくも美しい。
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