2.流行に乗れない俺

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「MINATOって、今人気沸騰中の、いや、俺の中ではずっと前から流行中のビジュアル系バンドでさ。ボーカルのKAIが超ヤバイんだ」 自慢げに芝ちゃんはそう言って、俺の背中をポンッと叩いた。 「高宮、どうせ暇だろ?」 「来週って…期末じゃん。無理無理」 あっさりと断ると、それが気に入らなかったのか、芝ちゃんはまたさっきと同じ首を絞める仕草をした。 「い、いや、えーっと…ほら。僕たち学生だから勉学に勤しまないとお母ちゃん泣いちゃうじゃん?」 言い訳を必死に考えた俺の台詞に、とうとう俺の首に芝ちゃんの手が絡みついて、俺はそれから逃げようと目の前の机の上を飛び越えて、教室中を芝ちゃんと一緒に駆けめぐった。 女子は呆れた顔してるし。 男子集団は爆笑してるし。 机は倒れるし。 イスは吹っ飛ぶし。 芝ちゃんは楽しそうだし。 俺も、楽しいし。 これぞ学園生活ってかんじの高校生活を送る。 それと言って不満もなくて、いい仲間に囲まれてる感じで。 そりゃぁ嫌いな奴もいるけど。 今の俺に足りないものがあるとすれば、そう。 金だ。 「芝ちゃん、俺本気で来週の期末は真面目にやらないとマズいんだって!許してよ!」 叫んだ俺の言葉に。 「知ってるよ、別に俺はただ高宮を追いかけてるだけだもん」 そう言って芝ちゃんは笑った。
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