第1念 「醜さの象徴」

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まだ幼い少年はこの天候を気にも留めず、真っ暗な部屋の中で本を読んでいた。 部屋の明かりを灯すのも忘れ、少年は読み耽っていた。 時折光る稲光が部屋を照らすので、無理に明かりを灯そうとしない。 本はかなり読み古されているらしく、至るところがボロボロである。 少年が読んでいるその本はどこにでもある普通の昆虫図鑑。 特にお気に入りなのは、今開いている蝶のページだ。  お腹が空いてきたが、少年は何かを食べようとはしない。 例え何か他のものに対する欲求が生まれても、何もしない。 誰かに促されない限り、決して図鑑から目を離すことはないのだ。
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