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少年は相変わらず図鑑を眺めていた。
一瞬、目の前が黄色くなったような錯覚に襲われた時、異変に気付いた。
身体がビリビリと痺れ、とてつもなく熱くなってくる。
やがて、視界に入ってくるのはメラメラと揺れる赤いもの。
それらはほんの数秒の出来事だった。
昆虫図鑑が燃えている。
速くも黒く灰になりつつある。
自分も燃えている。
瞬く間に身体の自由が奪われていく。
熱い……熱いよう……。
助けて、じいちゃん……助けて助けて……。
お父さん……お母さん……
その言葉は口には出なかった。
ただ、そう思うだけで精一杯だった。
その日、森崎という表札がかかった一軒の古い家から火があがった。
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