第1念 「醜さの象徴」

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「いってきます」   パンを一片だけ食べると、すぐに玄関に向かう。   「いってらっしゃい。 由美、バイト終わったら気をつけて帰って来るのよ、最近物騒な事件多いから」   「分かってる」   そう言って玄関の外へ出た。 4月1日の今日から新学期が始まるのだが、複雑な思いだ。 期待と不安が入り混じっているのだが、どちらかというと不安の方が多い。 大学受験まであと1年あるとはいうものの、きっとあっという間に過ぎていく。 事実、この1年がそうだったから。 それを考えると今から憂鬱だ。   だが、何よりの不安の種はすぐ目の前にある。 クラス替えという学生には天国にも地獄にもなるイベント。 言わば、ひねくれた宝くじのようなものだ。 入学してからせっかく慣れてきたクラスを変えるとは、学校側は何を考えているのだろう。 今年のクラスが卒業まで御一緒となると、最悪の状況だった場合しか浮かんでこない。 知っている人はどれだけいるだろうか。 初めての人とも仲良くやっていけるだろうか。 世間様から見れば鼻で笑われるようなことかもしれないが、当事者達にとってみれば大問題なのだ。
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