283人が本棚に入れています
本棚に追加
当たり前の話だが、一歩進むにつれて学校に近付いていく。
こんなに学校に行くのが嫌なのもわりと珍しい。
それほど親しい友人が多いわけでもないが、決して少ないわけでもない。
彼女は何事もごく普通にこなす、どこにでもいる普通の女子高生だった。
この横断歩道を渡ればもう学校は近い。
そう思うと溜め息が出る。
しかし、渡らずに突っ立っているわけにもいかないのでしぶしぶ渡る。
横断歩道を渡り終えるとすぐに、前方の道の脇に何かが見えた。
ピクピクと動いている。
近くに行くとそれが猫であることが分かった。
ただ、その猫の後ろ足はあり得ない方向に曲がり、血で赤く染まっている。
血の乾きぐらいから昨晩に車にでも轢かれたのだろう。
その猫の前にしゃがみこんで、そっと抱き抱える。
そして、折れ曲がった足を軽く握ると目を瞑った。
少しずつ足を握る手の力を強めていき、最後にはギュッと強く握りしめた。
それから10分くらい経ったのだろうか。
手を離すと、猫の足は真っ直ぐに元通りになっていた。
「もう飛び出しちゃ駄目よ。車には気をつけてね」
そう言いながら優しく猫を放してやる。
すると、猫は初めから怪我など無かったかのように走り去った。
それを複雑な表情で見送ると、また歩き出す。
彼女はどこにでもいる普通の女子高生だった。
この力が無ければ……。
最初のコメントを投稿しよう!