第1念 「醜さの象徴」

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当たり前の話だが、一歩進むにつれて学校に近付いていく。 こんなに学校に行くのが嫌なのもわりと珍しい。 それほど親しい友人が多いわけでもないが、決して少ないわけでもない。 彼女は何事もごく普通にこなす、どこにでもいる普通の女子高生だった。   この横断歩道を渡ればもう学校は近い。 そう思うと溜め息が出る。 しかし、渡らずに突っ立っているわけにもいかないのでしぶしぶ渡る。 横断歩道を渡り終えるとすぐに、前方の道の脇に何かが見えた。 ピクピクと動いている。 近くに行くとそれが猫であることが分かった。 ただ、その猫の後ろ足はあり得ない方向に曲がり、血で赤く染まっている。 血の乾きぐらいから昨晩に車にでも轢かれたのだろう。 その猫の前にしゃがみこんで、そっと抱き抱える。 そして、折れ曲がった足を軽く握ると目を瞑った。 少しずつ足を握る手の力を強めていき、最後にはギュッと強く握りしめた。   それから10分くらい経ったのだろうか。 手を離すと、猫の足は真っ直ぐに元通りになっていた。   「もう飛び出しちゃ駄目よ。車には気をつけてね」   そう言いながら優しく猫を放してやる。 すると、猫は初めから怪我など無かったかのように走り去った。   それを複雑な表情で見送ると、また歩き出す。   彼女はどこにでもいる普通の女子高生だった。   この力が無ければ……。      
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