第1念 「醜さの象徴」

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そうこうしているうちに、担任教師がやってきた。 偶然にも去年の由美の担任教師だった。 面白みが無いとは感じつつも、特に問題は無い教師だったのでほっとする由美。   やがて始まった教師のいつもと同じ話を由美も含め、誰一人として真面目に聞いてはいない。 それはいつものことだ。 だが、その日は違った。 教師の次の言葉に教室内の誰もが耳を傾けた。   「さて、次の話だが今日は新しい友達を紹介する」   一瞬の無音状態の後、一層ざわめきたつ教室。 新しい友達、即ちそれは転入生の存在。 学校内ではトップクラスのイベントだ。   「静かに。じゃあ待たせて悪かったね、入ってきなさい」   担任の視線の先にクラスの視線が集中する。 その先には今まさに開かれるドアがあった。 ドアをゆっくりと開けて入ってきたのは一人の男子学生。 背丈も体型も普通で、髪の長さはこの歳の男子にしては長過ぎず短過ぎず、顔も特別格好良いというわけではないが、酷く醜悪というわけでもない。 それこそ、普通良くも悪くも普通という言葉意外当てはまらない容姿だった。 そんな容姿の転入生は、担任が黒板に名前を書き終えると同時にペコリと頭を下げながら言った。
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