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・・・・が、その拳は五木の体に触れることはなかった。
手首に光るリングが拳をその位置で固定していた。
「───はいそこまで」
どこからかの声で空気が止まった。
「そこの二人、試合以外での戦闘及び、他生徒の巻き込みにより[風紀委員会]が断罪する」
道を開けていく向こうから、一人の青年が歩いてくる。
(・・・誰だ?)
殴ろうとしていた相手の拳を掴みながら青年の方を向いた。
青年は杖を取り出し一瞬で呪力を集めた。
「[ライトリング]」
そう唱えた途端、二人の男に光り輝くリングが付けられ、身動きでき無くされたていた。
「くそっ!!動けねぇ!」
「大人しくしていなさい。怪我したくないでしょう?」
「なにぃ!」
「あぁ、そうそう。君、時間稼ぎご苦労様。おかげで早く済んだ。ありがとう」
そう、五木にお礼を述べて、青年は二人を連れて、行ってしまった。
それに続いて、喧嘩の原因が消えたことで、皆散っていった。
「・・・はぁ」
一気に力が抜けた五木はため息をついた。
「入学そうそうやってしまった・・・」
地面にはひび割れ、凹み、焼け焦げた跡がクッキリ残っていた。
本来この学院で武術を使うつもりはなかったのだが、思わず使ってしまった。
(はは・・・なに正義感溢れる人的なことやってんだろ・・・俺)
そう思いながらその場を去ろうとしたら、袖を誰かに摘まれた。
「ん?」
振り返って見れば、さっき助けた少女だった。
「あ!えっと、ありがとう。さっき助けてくれて・・・」
顔を真っ赤にさせながら言う少女を見て、五木は少女に笑いかけた。
「どういたしまして。君、怪我はない?」
「はっはい!!大丈夫です」
「それはよかった。えっと」
「わっわたしはエリアス・マードリック。『治癒』学部に所属してます」
エリアスと名のった少女はおずおずと恥ずかしそうに言った。
「エリアスさんね。俺は蔵旗五木。『召還魔術』学部に所属してます」
五木はそう言って握手した。
(・・・・・・ホントに、俺は何やってんだろうか・・・・・・)
その日はやけに雲一つ無く、空が透き通っていた。
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