一章

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 ・・・・が、その拳は五木の体に触れることはなかった。  手首に光るリングが拳をその位置で固定していた。  「───はいそこまで」  どこからかの声で空気が止まった。  「そこの二人、試合以外での戦闘及び、他生徒の巻き込みにより[風紀委員会]が断罪する」  道を開けていく向こうから、一人の青年が歩いてくる。  (・・・誰だ?)  殴ろうとしていた相手の拳を掴みながら青年の方を向いた。  青年は杖を取り出し一瞬で呪力を集めた。  「[ライトリング]」  そう唱えた途端、二人の男に光り輝くリングが付けられ、身動きでき無くされたていた。  「くそっ!!動けねぇ!」  「大人しくしていなさい。怪我したくないでしょう?」  「なにぃ!」  「あぁ、そうそう。君、時間稼ぎご苦労様。おかげで早く済んだ。ありがとう」  そう、五木にお礼を述べて、青年は二人を連れて、行ってしまった。  それに続いて、喧嘩の原因が消えたことで、皆散っていった。  「・・・はぁ」  一気に力が抜けた五木はため息をついた。  「入学そうそうやってしまった・・・」  地面にはひび割れ、凹み、焼け焦げた跡がクッキリ残っていた。  本来この学院で武術を使うつもりはなかったのだが、思わず使ってしまった。  (はは・・・なに正義感溢れる人的なことやってんだろ・・・俺)  そう思いながらその場を去ろうとしたら、袖を誰かに摘まれた。  「ん?」  振り返って見れば、さっき助けた少女だった。  「あ!えっと、ありがとう。さっき助けてくれて・・・」  顔を真っ赤にさせながら言う少女を見て、五木は少女に笑いかけた。  「どういたしまして。君、怪我はない?」  「はっはい!!大丈夫です」  「それはよかった。えっと」  「わっわたしはエリアス・マードリック。『治癒』学部に所属してます」  エリアスと名のった少女はおずおずと恥ずかしそうに言った。  「エリアスさんね。俺は蔵旗五木。『召還魔術』学部に所属してます」  五木はそう言って握手した。  (・・・・・・ホントに、俺は何やってんだろうか・・・・・・)  その日はやけに雲一つ無く、空が透き通っていた。
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