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「最初に言ったけど、貴方を罰するつもりなんて最初からないのよ。蒼眼の悪魔君」
名前では無く呼称で呼ばれた言葉に、五木はあからさまに眉を潜めた。
「・・・・何のことでしょうか?」
「損是ぬを通すつもりなら、それでもかまわないけど。率直に聞くわ。蔵旗五木君、『王術』学部に入らない?」
「は?」
「ここの『王術』はね、強さを持っている人ならばだれでも入れるんだ。でも、呪力ともに肉体にも相当な消費するからあまりは入らないのよ。だから、その呪力ともに肉体的にも強い人見つけてこうして編入させてるのよ」
「いや、ちょっと待て。俺は、そんなつもりはない!」
素の言葉使いに変えはっきりと言った。
「俺はここに、魔術を学びに来たんだ!」
「そうね。でも、王術でも魔術を教えているわ。」
「そういう問題じゃない!」
「では、どういう問題なのかしら?」
問われて、五木はぐっと息を詰まらせた。
「・・・・俺が、王術に興味がない」
「へぇ、なるほど」
五木の言葉にアルマは大仰に頷いてみせた。しかし、縁起だというのは丸見えだ。目は変わることなく、楽しそうに歪めていた。
「ここの生徒会には生徒を守り、安全な学院にする義務がある。弱くてはいけないのよ。只でさえここは学院。他の国や都市とは違い、戦力は少ない。王術を学ぶ者も今では私一人。それではもし強力な魔物や魔法を疎む輩が襲ってきても、太刀打ち出来ないのよ。」
魔物・・・・それは人の負の力で生まれた生物。人を食すという本能で動く、いわば怪物だ。
「つまり、俺が『王術』学部で王術を学べば多大な戦力になると?」
「そういうこと。今年は魔物の動きが活発になっていると聞いているから。いつ此方に攻めてくるかわからないのよ」
それで負ければ・・・・・想像して、五木は身震いした。
(・・・みんな殺される)
こことの関わりが薄いとはいえ、それでも人が死ぬ事を五木は恐れた。
五木の脳裏に妹の姿が過ぎる。
(・・・あの時をまた繰り返してはいけない。俺はそう思って魔術を・・・・・・力を手に入れると決めたんだ・・・・)
意を決し、沈みかけていた視線を持ち上げた。
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