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カタカタカタ。
私は彼……コウの奏でる音にまどろみながら、幼い頃を思い出していく。
そういえば、このベッドで溺れた事もあった。
名前を貰った私は、コウの後をずっとついて回った。
夜になり、コウは私にベッドを作ってくれた。
「今日からここがサクラのベッドだよ」
浅い段ボールの箱に、バスタオルを丸めて入れただけの、今思えば随分手抜きなベッド。
それでも幼かった私は、フカフカの感触に喜んで丸まっていた。
「おやすみ」
そう言ってコウは私の頭を撫で、灯りを消すと、自分のベッドへと倒れ込んだ。
慣れない子猫の……私の世話に疲れたのだろう、直ぐに寝息が聞こえてきた。
一人ぼっちの暗闇の中で、私は急に怖くなった。
今までは、母親がいた、兄弟達がいた。
今は一人ぼっち……。
私は怖くて……寂しくて……泣いた。
「にー、にー、にー」
(お母さん……お兄ちゃん……)
一人ぼっちは……寂しかった。
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