37人が本棚に入れています
本棚に追加
私の名前は『サクラ』。
彼が付けてくれた。
私は小さい頃、兄弟と共に箱に入れられて、人間に捨てられた。
兄弟達が冷たくなっていく中で、私は彼に出会った。
真っ暗な箱の中に、突然光が射し込んでくる。
そして覗き込んできたのが彼だった。
「おいで?」
彼はそう言うと私に手を伸ばした。
だが私は、恐怖と寒さと空腹で、逃げる事も鳴く事も出来なかった。
彼の後ろで降っている白い物は、今思えば雪だったのだろう。
箱の中は余りにも寒かった。
彼は、自分をジッと見つめる私を、ソッと持ち上げる。
その瞬間、私から恐怖は去っていった。
彼の手は、優しくて大きくて……そして温かかった。
彼の手に包まれた私が次に見たのは、彼の悲しそうな顔だった。
その彼の視線は、今さっきまで私がいた箱に向いている。
最初のコメントを投稿しよう!