「サクラと名前」

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 私の名前は『サクラ』。  彼が付けてくれた。  私は小さい頃、兄弟と共に箱に入れられて、人間に捨てられた。  兄弟達が冷たくなっていく中で、私は彼に出会った。  真っ暗な箱の中に、突然光が射し込んでくる。  そして覗き込んできたのが彼だった。 「おいで?」  彼はそう言うと私に手を伸ばした。  だが私は、恐怖と寒さと空腹で、逃げる事も鳴く事も出来なかった。  彼の後ろで降っている白い物は、今思えば雪だったのだろう。  箱の中は余りにも寒かった。  彼は、自分をジッと見つめる私を、ソッと持ち上げる。  その瞬間、私から恐怖は去っていった。  彼の手は、優しくて大きくて……そして温かかった。  彼の手に包まれた私が次に見たのは、彼の悲しそうな顔だった。  その彼の視線は、今さっきまで私がいた箱に向いている。
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