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まだ蝉が鳴く季節ではなかったが暑いのは確かだった。校舎の庇の内側は日陰になっていてまるで平屋の縁側のように涼しかった。不意に後ろが気になった賢治はどうせ暇だからと校舎の中を見学することにした。
中は別世界のように涼しく冷房でも入っているのかと思うくらい冷んやりとしていた。木造の校舎は当然ながら壁や床の色が濃く、なんだかコンクリート製の校舎より暗い感じがした。昔の父や母もこんなアンティークな学校で授業を受けていたのかと思うとちょっと羨ましい。
そうやって一階の廊下を歩いているとオルガンの音が聞こえてきた。他にも誰かいるらしい。懐かしいメロディーに釣られて賢治はドアの開いている教室の前まで来た。
教室の中に入ると一人の少女がオルガンを弾いていてその隣にももう一人の少女がいてそれを聴いていた。彼は一瞬先生もその場にいるんじゃないかと焦ったがどうやら教室には二人しか居ないようだった。どう話し掛けて良いか分からず彼は何故か「おはよう」と話し掛けた。しかし返事は無く少女達はオルガンに夢中だ。賢治はまぁ邪魔するのもなんだし…。と思ってその場を立ち去った。
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