第八章「kiss」

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「う~ん・・・どこに行けばいいのかな」 勢いに任せて出てみたものの どこへ行けばいいか解らないのが現実 ふっと寄った病院で見つけられるほど 上手に出来ていたらいいのに・・・ 時間が無い・・・こうやって悩んでいるうちにも 慶太さんに会えなくなってしまう それだけは絶対に嫌だ 会って、ちゃんと私の思いを伝えたい -絶対に見つけるんだ、がんばれ私。- なんども言い聞かせる、そうしないと私は逃げてしまいたくなるから 自分に鞭をうつ、どこかで私は甘えてたのだ 別れた日の事だって、もっとちゃんと言えていれば何か変わったかもしれない 逃げてばかりの私をいつも支えてくれた人を私が今度は支えたい そう決めるとこのあたりの病院全てをまわることにした 一件、二件と回って行く次こそはと思うたび 居ないとわかると泣きそうになった 強くなるんだって決めたのに弱い私が出てくる 目を閉じてみる、そこに慶太さんを映す そうやって騙し騙し次へ次へと回っていく このあたりの総合病院は全部で6っつ そのうち私は5つ回り終えてしまった・・・ 「あと一件・・・これで居なかったらどうしよう。。。」 あと一つだけだ、不安ばかりが大きくなっていく 会いたい、その気持ちだけが私の体を動かしている 本当にそんな感じだった タクシーを拾い最後の希望へと向かっている最中 ふと外を眺めるとカップルが手をつないで幸せそうに歩いているのを ただ眺めながら、昔の自分たちを重ねていた そんな余裕無いはずなのに、なぜか微笑んでいる自分がそこに居た 久しぶりだなと思った。 半年の間どれだけ泣いたんだろう、作り笑いをし続けたろう 例え一時間でも一分でも慶太さんと居られたなら それだけで良い、もしも、会えたなら私はもう泣かない。
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