屋上から飛び降りる

5/11
前へ
/11ページ
次へ
   ん、いや、ちょっと待て。 「……君、自殺するの?」  俺は咄嗟に彼女の言葉を思い返し、そっと尋ねた。  今この子、あたしが自殺するとか何とかって言ったよな? 「そう、死ぬの。死んで、カッコイイ死に神ボーイと出会うのよ!」 「……は?」 「この世はつまんないわ! 空から美少年が輝く白い歯を見せながら落ちてこないし! 拾った犬は次の日逃げてるし!」  あらあら、どうやらこの子、かなり可哀相な子だ。現実逃避も甚だしい。 「ちょっと待った。よく考えてみなよ。そんな事起きる訳ないだろ。現実を見ろ。死に神なんてファンタジーだ。ファック!」 「決め付けないでよ! ……そう言うきみは、何で自殺なんかするの?」 「ナイスバディで姉さんキャラでちょっとエッチな死に神ガールと出会う為さっ!」  未だ座り込んでいる俺を侮蔑満開の目で見据える彼女は、舞い踊るスカートを全く気にしていない。  おいおい。  死に神が男だって? そんな妄想は止めてくれ!
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加