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「ねぇガー子」
「なんだい?」
「お嬢様もたまにはメイドの仕事をやってみたりしないのかしら」
「そうだねぇ、あのお嬢様はめんどくさがりだからね」
「そうだね」
夢中になって話していると、突然部屋のドアが開いた。
「何をしているの? レーヌ」
開いたドアからは、エテが入ってきた。昼寝でもしていたのか、寝巻きの格好だった。
「!? お嬢様!? ゴホッ……なんでもありません」
アヒルのぬいぐるみ。もといガー子を隅に戻して、レーヌはエテに向かい合った。
「どうしました? 何か用事でもありますか? 紅茶ならミストラルにでも――」
「いいえ、今日は貴女とミストラルと一緒に夕食でも食べようかなと思ってね。でも、お邪魔だった?」
「そ、そんなことありません! では、ミストラルにも伝えておきます」
「ふふ、じゃぁ、また夜にね」
それだけ言うと、エテは部屋の外へ出て行った。
「……」
お嬢様もお嬢様なりに気を使ってくれていたんだろう。だから食事にも誘ってくれたに違いない。
レーヌはそう考えて、ぬいぐるみにまた話しかけた。
「お嬢様も結構優しいところがあるみたいです」
けれど、ぬいぐるみはもうレーヌの言葉に返事をしなかった。
レーヌはクスクスと少し笑いながら、部屋の明かりを消して、午後の職務につくことにした。今夜の料理をコックメイドに伝えなくてはならない。今日はお嬢様の大好きな食べ物にしよう。きっとミストラルは苦手だろうけど、そのやり取りを見るのも楽しいだろう。
レーヌはゆっくりと自分の部屋の扉を閉めて、広い広い屋敷の廊下をまた、歩き始めた。
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