The moon is swallow

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「星が綺麗ね」  テラスの椅子に座りながらエテがそう呟いた。  月と星の明かりだけを頼りに、レーヌがエテの部屋から紅茶を運んできた。その後ろではミストラルがレーヌを手伝おうと部屋の中を走り回っていた。何かと覚えるのが苦手なミストラルは、一つのことを実行するだけで相当の時間を要してしまう。 「確かに、今日は月がいつもより暗いですからね」  テーブルの上に紅茶を用意しながらレーヌは答えた。紅茶はエテ専用に飲みやすい温度になっているので、エテは入れられた紅茶をすぐに飲むことが出来た。 「十六月だからね。月明かりというよりも、星明りかしら?」  やはり夜の世界は綺麗だ。とエテは思った。月明かり。星の輝き。薄暗い木々。誰もが寝静まってからしか見られない景色。自分だけが独り占めしているような安心感がそこにはある。そんな安心感を、エテは本当に心地よく感じているのだ。  飲み干したティカップをテーブルに置いて、エテは立ち上がった。そして、部屋の中でまだ走り回っているミストラルに声をかけた。 「ミストラル。そっちはもう良いからこっちに来なさい」 「はい! わかりました」  エテに呼ばれると、ミストラルはすばやく立ち止まった。そして、エテたちが居るテラスに向かって走り出した。 「走らなくても良いからゆっくりね」 「はいー」  最近、ミストラルはエテと一緒に居るときは言葉を噛むことが少なくなった。朝昼夜の紅茶の時間をエテがいつもミストラルと一緒に取るからなのか。初日のようにミストラルは、エテの前で緊張しなくなっていた。  屋敷は広い。ミストラルがテラスに出るまでにほんの少し時間がたった。
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