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「あぁ、もう、落ち着き――」
人間がそう叫ぼうとしたとき、部屋の入り口から聞こえてきた大きな声が、言いたいことを全て言ってくれた。
「落ち着きなさい! お嬢様の前ですよ!」
騒いでいたメイドたちがいっせいに静まりかえり、その声の主を見つめる。
「エテお嬢様! ご無事ですか?」
凛とした部屋全体に通る声で、声の主は話した。
「大丈夫も何も無いわよ……ただ、レーヌ。舌を火傷してしまったわ」
エテが話すと、一斉にメイドたちが整列し、道が開いた。
「私が猫舌だってわからない人って言ったら……新しいメイドかしら?」
「はい。今日入ったばかりの新入りのようです。早速新人いびりが始まっているようで」
エテの後ろに列をなしていたメイド達の数人が少し反応して動いた。自分の仕事を新人に押し付けて自分達だけ楽をしようと思っていたのだろう。新人は何も悪くない。だからここは後でこのメイドたちを厳しく躾けなくてはだめだ。
「レーヌ。さっきそこで動いたメイドを後で躾けておきなさい。それから、今日の新人をここに呼んで二人っきりにしてくれる?」
「判りましたお嬢様」
それだけ言うと、レーヌはパンパンと手を鳴らして、外にでていった。その合図とともにぞろぞろと他のメイドたちも部屋から出て行った。
エテは、また紅茶のカップを眺めた。白い湯気がふわふわと漂っている。まだ温度が高い。このまま飲むと焼けどしてしまうだろう。
「新しい物を入れさせましょう」
レーヌが呼んでいるはずの新人メイドを待つまで、エテは紅茶を眺めることにした。
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