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コンコン。部屋の入り口を叩く音が響いた。
「失礼します」
ドアをゆっくりと開いて、少し小柄の少女が中に入ってきた。見た目だけで判断するなら、13~15歳程度に見える。
新しく入ってきた新人メイド。どうやら、この少女がそのメイドらしい。私の部屋に普段から入れるようになっているのはレーヌだけで、緊急事態以外はそれ以外の人は入らないように躾けている。だから逆にここに入ると緊張してしまうメイドもいるのだ。
「よく来たわね」
エテはそう言って部屋の奥から新人メイドに声をかけた。びくっと少し驚いてから、新人メイドは返事を返した。
「えっえと、おじょうさま。今日はいったいどのような――」
メイドが質問を言う前に、エテは新人メイドに逆に質問をした。
「まず、貴女の名前を聞かせてもらおうかしら?」
エテは少しこの新人メイドが気に食わなかった。主人の前であるというのに、自分の名前がすぐにいえないのはマナーとしてどうなのかと、単純に思ったからだ。これ以上自分の気分を悪くするようなら首にしてしまおうとも思っていた。
「ああっご、ごめんなさい! 私はミストラルといいまひゅっ! ……す!」
ミストラルは大きく頭を下げてエテに挨拶をした。
挨拶をした方向は全く検討違いの場所で、エテが座っている椅子は反対の方向だった。
例の如く、部屋に明かりは点いていなかった。窓際だけに月明かりが蒼く照らされている程度で、他はほとんど見えない。明かりのついている部屋の外から入ってきてすぐは、闇に目が慣れていない。なので、ミストラルが何も見えないのもうなづける。
「私はこっちなんだけど」
「ええ、どっどこですか! おじょうさまー」
「その左側に蝋燭があるから火をつけなさい。マッチくらい持っているんでしょ?」
「あ、はい。わかりゃま……あ」
「クスクス」
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