梵天丸

6/7
前へ
/92ページ
次へ
ある夜、義子は白ひげをはやした老僧が義子のおなかに宿を借りたい、という夢を見た。義子が承知すると、夢の老僧は、幣束を義子に与えて、これを養育するようにといった。 幣束は、ゴヘイともいって、今日でも神主さんがおはらいのときに使っている。これは本当は、神が宿るところなのである。幣束を養えということは、神さまを養えということと同じではないか。 そして永禄十年(一五六七)八月三日、男の子が生まれた。輝宗二十四歳、義子二十歳であった。夫婦は大喜びで、 「梵天丸」 と名づけた。幣束のことを、また、修験道では梵天ともいうのである。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

387人が本棚に入れています
本棚に追加