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ある夜、義子は白ひげをはやした老僧が義子のおなかに宿を借りたい、という夢を見た。義子が承知すると、夢の老僧は、幣束を義子に与えて、これを養育するようにといった。
幣束は、ゴヘイともいって、今日でも神主さんがおはらいのときに使っている。これは本当は、神が宿るところなのである。幣束を養えということは、神さまを養えということと同じではないか。
そして永禄十年(一五六七)八月三日、男の子が生まれた。輝宗二十四歳、義子二十歳であった。夫婦は大喜びで、
「梵天丸」
と名づけた。幣束のことを、また、修験道では梵天ともいうのである。
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