みにくい眼

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〈なぜ……、母さまは……〉 梵天丸は、茫然となった。 片目に、みるみるなみだがあふれてくるのをおぼえた。 〈目のためか……〉 飛びだした目は、今日まで何度も片目をよせて見ていた。それは焦点があわずに、どのようなものか、はっきりしなかった。また、今日まで、喜多も女たちも、見まいにきた父も、目のことは、何もいわなかった。その目は、母が、仰天してにげだすほどみにくく、気味の悪いものであったらしい。
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