恋の罠にハマる

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恋の罠にハマる

「――であるから、すなわち――」  昼下がり。  決して狭くはないが広くもない、教室という名の箱の中に、僕はいた。  冷房はよく効いていて、涼しい。  規則正しく並べられた机には生徒が一人ずつ座っていて、視線を忙しく白板とノートとの間を行ったり来たりさせている。  その机の並びと、生徒の揃った動作が軍隊的な何かを連想させる。何かっていうのは……ほら、何かだよ。 「よって――ということになる」  教壇の上で話す先生の声が遠い。  昼下がりなんだ。頭がぼぅっとしたっておかしくない。  それに、授業は退屈だ。 「ここではこの部分の文法が重要で、これはよく出るから――どうしたの? 有坂」 「その、頭痛いので保健室に行きたいのですが」  窓際の一番後ろの席、立ち上がって有坂と呼ばれた生徒は他でもない、僕。  退屈だし、眠いし、保健室で休みたい。  実際少し頭痛がするから仮病じゃない。大丈夫。  英語の佐藤先生はあっさりと頷いた。佐藤先生は美人だけども、僕のタイプじゃない。  今もほら、自分が美人だとわかった上で、狙った感じで笑う。これが嫌いなんだ。ナチュラルが一番でしょ。 「行ってきなさい」
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