高校二年-春-

3/10
前へ
/17ページ
次へ
毎朝、遅刻スレスレの時間になると校門の前が自家用車で一杯になる。 冬の恒例行事。 別に金持ちの学校、って訳じゃくて。バスがあんまないから。確か、二本くらいしかないらしい。 だから遠くに住んでる奴等はバスを乗り過ごすと、親に送ってきてもらってる。 俺の家は玄関開けりゃー校舎が見える。直線距離にしちまえば近い。けど、俺と学校の間を阻むヤツがある。 そいつは、自然。 ねいちゃー(スペルなんて知らね)。だから、遠回りをしなければならない。 俺はその現実が堪らなくイヤで、8:2の確率で送ってもらってる。 ******* 使い馴れない新しい下駄箱の側面には、新しいクラスの出席番号と共に名前が書いてある紙が貼ってある。 コレを見ないと、自分の下駄箱がドコか分からない為、群がる生徒。 「お前良かったジャン、結構近くだぜ。下駄箱」 その言葉と共に頭に感じた重み。 直ぐ様、鳩尾に肘鉄喰らわせ振り返る。腹抱えつつ噎せる相手、そう、クラス発表の時にレンとバトルしたシュンだった。 「久し振りの再開早々、肘鉄かよ…いいねェ、その反射神経。ショートに決定!」 苦しそうに表情歪めつつも口元に笑み浮かべ、ビシッと俺を指差す。また煩い日々の予感がし、溜め息を吐きシュンの肩に手を乗せ、一言。 「俺は映画を心から愛してっから、無理」 それだけ告げ、教えてもらった下駄箱に靴を押し込み、上靴に履き替えた。 背中から、 「薄情者」とか「諦めねェ」とか、「でもダイスキ」とか色々聞こえたけど…それから逃げるようにして、早足で教室へと向かった。 (だって、視線が半端ねぇくれーイタイ!)
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加