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毎朝、遅刻スレスレの時間になると校門の前が自家用車で一杯になる。
冬の恒例行事。
別に金持ちの学校、って訳じゃくて。バスがあんまないから。確か、二本くらいしかないらしい。
だから遠くに住んでる奴等はバスを乗り過ごすと、親に送ってきてもらってる。
俺の家は玄関開けりゃー校舎が見える。直線距離にしちまえば近い。けど、俺と学校の間を阻むヤツがある。
そいつは、自然。
ねいちゃー(スペルなんて知らね)。だから、遠回りをしなければならない。
俺はその現実が堪らなくイヤで、8:2の確率で送ってもらってる。
*******
使い馴れない新しい下駄箱の側面には、新しいクラスの出席番号と共に名前が書いてある紙が貼ってある。
コレを見ないと、自分の下駄箱がドコか分からない為、群がる生徒。
「お前良かったジャン、結構近くだぜ。下駄箱」
その言葉と共に頭に感じた重み。
直ぐ様、鳩尾に肘鉄喰らわせ振り返る。腹抱えつつ噎せる相手、そう、クラス発表の時にレンとバトルしたシュンだった。
「久し振りの再開早々、肘鉄かよ…いいねェ、その反射神経。ショートに決定!」
苦しそうに表情歪めつつも口元に笑み浮かべ、ビシッと俺を指差す。また煩い日々の予感がし、溜め息を吐きシュンの肩に手を乗せ、一言。
「俺は映画を心から愛してっから、無理」
それだけ告げ、教えてもらった下駄箱に靴を押し込み、上靴に履き替えた。
背中から、
「薄情者」とか「諦めねェ」とか、「でもダイスキ」とか色々聞こえたけど…それから逃げるようにして、早足で教室へと向かった。
(だって、視線が半端ねぇくれーイタイ!)
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