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『大丈夫だよ』
寒さを堪えながら、
山元 徹は京介に笑顔を向けた。
本当は、寒くて寒くて
仕方なかった。
歩くのもやっとで
足の感覚も
ほとんど無い状態だった。
このあたりでは
滅多に雪は降らない。
徹が雪を目にしたのは、
もう5年も前だ。
今日で2度目の雪景色。
否、実際は3度目だ。
徹は1歳の時、
施設に引き取られた。
その日も今日と同じく
雪の舞う12月だった。
両親の事は知らない。
バス停の片隅の小さな小屋で
徹は置き去りにされていた。
たまたま通り掛かった人に
発見されなければ
命を落としていたかも知れない。
運がよかった?
その時徹は
生きる事を宿命付けられた。
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