桃の香漂う

3/5
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
そんな風に思案している私の耳に、テノールの声が優しく響く。     「ユキちゃん、煙草吸うんだね」     「今時女の子が煙草吸うの珍しくないでしょ?」     振り向くと柔らかい表情の男性の姿。   彼はコンビニの袋からパックジュースを取り出した。   それは桃色のピーチティー。   30歳に成り立ての男性とはミスマッチな気がして、私はクスリと笑みを漏らした。     「トオルさんが甘い飲み物って不思議な感じ」     「男は甘党多いよ。人前では恥ずかしいからって隠す人もいるからね」     そう答える貴方の笑顔が眩しかった。     .
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!