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◇
「なあ永久ぁ~」
電車の中に入り込み、高橋永久は俺から瀬を向けて早足で逃げようとする。
「いい加減にしてよ!」
彼は向き直り、ヒステリー気味に叫ぶ。
「いいじゃんかよ。ダチなんだし」
俺の笑顔に呆れたのか、それとも腹を立てたのか、一層声が大きくなる。
「誰が!いつ!そんな事言ったの!!大体さ、田村君って違う電車じゃん」
「いいのいいの。今からダチの家に行くから」
「誰の?」
「お前の」
ガシッ
いよいよ怒りも限界に達したのか、永久は俺を足蹴にし、ホームへと放り出した。
「ってー……永久ぁ~母ちゃん紹介してくれるって言ったじゃん!!」
「うるさい!」
ドアが閉まる事を知らせるベルが鳴る。
「永久くーん!!」
永久は俺に背を向けたまま、何も無かったのごとく、学ランについた埃を払いながらつり革に手をかける。
ドアは閉まった。
電車と永久はゆっくりと俺の前から逃げていく。
「永久あああ!!覚えてやがれよ!!」
永久は俺の方へと振り返り、軽蔑の瞳を向けておそらく「死ね」のニュアンスの言葉を吐いていた。
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