2nd set [四つの瞳]【前編】

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◇ 「なあ永久ぁ~」 電車の中に入り込み、高橋永久は俺から瀬を向けて早足で逃げようとする。 「いい加減にしてよ!」 彼は向き直り、ヒステリー気味に叫ぶ。 「いいじゃんかよ。ダチなんだし」 俺の笑顔に呆れたのか、それとも腹を立てたのか、一層声が大きくなる。 「誰が!いつ!そんな事言ったの!!大体さ、田村君って違う電車じゃん」 「いいのいいの。今からダチの家に行くから」 「誰の?」 「お前の」 ガシッ いよいよ怒りも限界に達したのか、永久は俺を足蹴にし、ホームへと放り出した。 「ってー……永久ぁ~母ちゃん紹介してくれるって言ったじゃん!!」 「うるさい!」 ドアが閉まる事を知らせるベルが鳴る。 「永久くーん!!」 永久は俺に背を向けたまま、何も無かったのごとく、学ランについた埃を払いながらつり革に手をかける。 ドアは閉まった。 電車と永久はゆっくりと俺の前から逃げていく。 「永久あああ!!覚えてやがれよ!!」 永久は俺の方へと振り返り、軽蔑の瞳を向けておそらく「死ね」のニュアンスの言葉を吐いていた。
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