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「……永久とアイツ、一年の頃付き合ったんだ」
「マジで!?」
「シッ」
「……はいはいゴメンゴメン」
チアキは人差し指を口に当てて俺に黙れと合図を送る。
楽譜を棚に戻して振り返り、永久の話をしてから初めて、俺の目を見た。
彼は小刻みに右を見たり左を見たりと、酷くおどおどとしている。
「去年の多分梅雨の時期で……。雨は無かったと思う。永久は公園のベンチに一人で座っていたんだ。」
「普通じゃん」
「そうじゃなくて。アイツは……俺が名前を呼んでも気付かないまま、ずっと自分の掌を見つめていたんだ」
この口ぶりはまるで怪談話だ。
この様子だと、こいつにとってのトラウマだったのだろう。
「アイツは虚ろな目をしていて……ケラケラと笑っていたんだ。……奴が眺める手に……何があったと思う?」
「さあ……」
「……血だよ……」
トワ様確定、か……。
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