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目の前には緑一色の背丈ほどある雑草が生い茂っていた。
その雑草を空から降り注ぐ弾雨が打ち付け、渇いたパタパタという葉音を響かせている。
その中をしばらく進む内に広場に出る。
普段は誰もいない境内の裏手を抜け、雑木林をしばらく進んだ片隅に開かれた場所。
そこに二人の人影が揺らめいていた。
不思議な事にその内の一人は、雨の降りしきる中むき出しの地面の上で、仰向けに空を仰ぎ寝ている。
大量の雨を全身に浴びてなを微動だにせず、空を凝視したまま固まった眼孔は、死んだ魚の目のような鈍色(ニブイロ)を放っていた。
そのかたわらに立つ線の細い少女の陰影(インエイ)。
不釣り合いなほどのでかいスコップを持ったシルエット。
黙々と地面を掘り続ける少女の影だった。
その少女の横顔を、白夜が不思議なほどの白さで映している。
地面に突き刺さるたびスコップが金属の冷たさを光らせ、渇いた土の音をたてた。
黙々と繰り返される作業が何かの儀式を連想させた。
その作業の終了を物言わず待つ隣人は、相変わらず空を仰ぎ見たまま寝そべっている。
その時、唐突に地面を掘る音が止まった。
それは儀式の終わりが近づいている事を知らせていた。
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