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男は倒したライノサイダーの方へ向かい、自分の武器を拾い上げた。
男が拾い上げた武器は<ハルバート>または<斧槍>と呼ばれる長柄の武器だ。
<ハルバート>は別称の<斧槍>が示す通り槍に斧の刃がついておりその対には鉤爪がついている。槍で突き、斧で斬り、鉤爪で引き倒す等、多様な使い方ができる。しかし、その反面扱いが大変難しい。
男は斧槍に丁寧に鞘を着けるとエステルたちの方を向いた。
「ところで、今の魔獣は何ですか?ライノサイダーにしては少し大きく見えたのですが…」
「僕たちも急に襲われたので詳しくは…。ただ野生の魔獣ではないと思います」
「ほう…」
男は興味深げに目を細めた。
「気を付けておいた方がいいかもしれませんね…。では、私はこれで失礼します」
男は腰を折って礼をすると踵を返し歩き出した。
「あ、あの…」
エステルが呼び止める。
男が立ち止まって振り返った。
「はい、何でしょう?」
「お名前をいいですか?」
「名乗る程の者ではございませんが、ここでお会いできたのも空の女神のお導きでしょう。私はカイル。カイル・ラングリフと申します。ご縁があればまた会いましょう」
そう言ってカイルは王都の方へ立ち去って行った。
エステルとヨシュアはその後ろ姿をしばらく見送っていた。
「カイルさんか…」
エステルが呟く。
「なかなか強かったね」
ヨシュアが言った。
「そうよね~。ハルバートをあんなに軽々扱ったり、アーツも強力だったし、すごく礼儀正しい人だった」
エステルは少し嬉しそうに言った。
「やけに肩を持つね」
ヨシュアが笑顔で言う。
「えっ!?そ、そんなことないよ」
エステルは慌て否定した。
「ふーん」
「ヨシュア…ひょっとして怒ってる?」
「全然。気のせいじゃない?」
そう言ってヨシュアはさっさと歩き出した。
「あ、待ってよ。ヨシュア~」
エステルは慌て追いかけた。
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