8人が本棚に入れています
本棚に追加
――深夜。
「シロー!どこー!!」
そんな愛歌ちゃんの声が聞こえてきて、僕はちょっと、驚いた。
みんなが寝静まってからこっそり家を出たから、朝まで気付かないと思ったのに。
よく聞けば、お父さんとお母さんの声もする。
……嬉しいなって、そう思った。
突然居なくなった僕を、家族みんなが捜してくれる。それが、凄く嬉しかった。
「……にゃん」
ごめんね、とこっそり呟く。
僕のいるこの場所は、きっと狭すぎて、みんなは見つけられないね。
……でも、良いんだ、それで。
僕は決して、重たい空気で看取って欲しいわけじゃない。
僕は出来れば、いつもの笑い声に囲まれて、その時を迎えたい。
「シロー!どこにいるのー!!」
もう一度、愛歌ちゃんの声。
僕が見つからなくて困っている、愛歌ちゃんの声。
……でも、僕は知ってるんだ。
僕がみんなを困らせると、最初はみんな、困ったような顔をするけれど。
でも最後には、楽しそうに笑ってくれるんだ、みんな。
僕はそれが嬉しくて、楽しいから……
だから、最後までみんなを困らせちゃうけど……でも、許して欲しい。
だって僕は、出来れば……みんなの笑い声に囲まれて、その時を迎えたいから。
……そうして僕は、その時を迎える。
狭い場所で。独りぼっちで。
――でも、それを悲しいとは思わない。
だって僕は……みんなが最後には笑ってくれるって、そう、信じてるから……
最初のコメントを投稿しよう!