香坂さん

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『あ、寺田先生じゃん』 『こら、敬語使え。教師を敬えよなー』 『あはは!』 後ろには眼鏡をかけた男性教師が立っていた。 話しかけやすいと生徒から評判の保健室の先生――(口の悪い)寺田だ。 『つーか珍しい組み合わせで歩いてるじゃねーか』 『あ、日直なんで』 『お前ら真面目だなー』 会話する2人の横で香坂は窓から空を見ていた。 鳩が飛んでいる。 今日は唐揚げがいい… 1人で考えていると、おでこを突かれた。 視線をまた教師に戻す。 『…?』 『香坂、名前呼ばれたら返事くらいしろよ。あとちょっと来い』 『…?』 香坂は言われた通り教師の隣に立った。 男子生徒はよくわからないままその様子を見ていた。 教師は香坂の手から日誌を取り、彼に渡した。 『武藤、これよろしく。香坂借りる』 『え…え?何?仕事あるなら俺もやるよ』 『ちげーよ。ちょっと話しがあるだけだ。じゃーな』 教師はさっさと向きを変えて歩き出した。香坂もその後をついて行く。 『香坂さん!』 『?』 今日はよく名前を呼ばれる。 振り向くと男子生徒は笑顔で手を振っている。 『また明日ね!』 『…………うん』 それだけ言うとお互い違う道を歩き出した。 『武藤ていい奴だろ。てか手を振る愛想くらいもてよ』 『…‥別に』 無糖か…甘くなさそう 名前の変換を間違えているが香坂の頭に<ムトウ>という人物がインプットされた。
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