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香坂はまるでサザエ〇んのような昭和の香が漂うとある古い家の前でドアを開けて入った。
ガラガラ‥ピシャン
『ただいま』
ローファーを脱いでいると奥からパタパタというかわいらしい足音が近付いてきた。
『んきゃー!!お帰り~麗しき愛里っ!!今朝ぶりっ』
足音の主の女性は香坂の姿を見るやいなや抱き着いてきた。
その反動で持っていた鞄が肩から落ちた。
『‥栄美?…‥おばさんは?』
『母さん?なんか急に泊まりの仕事だってさ』
栄美と呼ばれた女性は肩より少し長い茶髪の毛先をゆるく巻いていて、白いワンピースを着ている美人だ。
まだ香坂に抱き着いている。
『はぁ~…仕事の疲れが愛里のハグで癒される~』
『……今日帰り早くない?』
『そうなの!!』
栄美は顔を輝かせ香坂から離れてクルクル回った。
その隙に香坂は和室に行き着替え始めた。
『今日はね~彼が初めて家に来るの!』
『………じゃ』
着替え終わり、財布を手にしてまた外に出ようとする香坂。
すかさず栄美が腕を掴む。
『待て待て!話終わってないし!!愛里を紹介したいの~会ってよ』
『…別に会わなくていい』
呆れながら香坂は座って靴を履きだすと栄美が焦って大声をだす。
『やだやだやだ~!!』
『栄美……』
『栄美!?』
ガラッ
何故か自分と誰かの声が被った。
そしてドアの音…
不思議に思い顔をあげる。
『……あ?…‥香坂?』
『あ‥』
そこには見知った顔があった――――隣の席の矢島だった。
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