499人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
「あら?」
それはうららかな初夏の午前中。
「あの子ったら…お箸忘れてるじゃない。
いつもちゃんと確認しろってのに…もぅ」
「どうかした?」
「昊、お願いがあるんだけど
このお箸、佳奈に届けてやってくれない?」
と聞きつつも母は手早く箸箱をハンカチで包むと、その両端を俺の首輪にくくりつけた。
「お願いね?お兄ちゃん」
その笑顔でそのセリフを言われると、もう逆らう気なんて起きません。
俺は我が家を後にして、佳奈の通う高校へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!