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不気味に静まる、夜。
何の音も無い、暗闇。
そこで、1人の少年が歩みを進めていた。
「今日も冷えるなぁ…」
手に、ふうっと息を吹き掛け、立ち止まる。そうして空を一度見上げると、再び思い出したように歩き出したのだった。
達上 光夜(タチウエコウヤ)。
それが少年の名前だ。
光夜は幼い頃に両親を無くし、それからは誰の手も借りず、一人で暮らしている立派な少年であった。そのため周囲からは「しっかりしている」や「親孝行な子」などと勝手に囃し立てられていたが、実際中身を見てみれば、夜中に両親を思い出し、枕を濡らすようなとても普通な子供なのであった。
そしてまた今日も。
「…っく…」
小さな部屋の中から、度々鳴咽が漏れる。
小さく、そしてとても弱いそれは、空気をかすかに揺らすだけであった。
誰かに気付かれる、と言う訳では無いが、何故か声を抑えてしまう。
そんな我慢強いところが、とても光夜らしかった。
「…寂しいのですか…?」
そんな時、する筈も無い声が、突然暗い部屋に響き渡った。
そんな突然の出来事に、光夜は飛び魚のように起き上がる。
「だっ…誰っ?!」
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