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「綺麗な顔してるのに…」
長時間、暗闇に居るせいで、目はいつの間にか、暗闇の住人の顔を捉えていた。
綺麗な卵型の輪郭に少々垂れ目。高い鼻筋。優しそうに微笑む少し薄めの唇。
髪の毛は肩に付きそうなぐらい長い金髪の髪、しかし毛先はぴょんぴょんと跳ねている。
左側の一束は茶色で着色されており、その髪型で、身だしなみにとても気を使っているのだと伺える。
ただでさえ、垢抜けていて普通には見えないが、一つ、普通の人と違うところをあげるとすれば。
「顔に…傷…。」
そう。彼には左頬に大きな十字の傷があるのだ。
それ一つで、美しい顔が台無し、と言う訳ではないが、その傷一つで「殺し屋」や「密薬売買人」など、素敵な自由業だと言うことが丸分かりである。
光夜はその傷を見つめると、ゆっくりと手で触れた。そっと、大事なものを扱うように優しく撫でる。
そうしていると、男は触れてくる光夜の手を、優しく静止した。
「参りましたね…。」
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