男の名前

5/7
前へ
/7ページ
次へ
「綺麗な顔してるのに…」 長時間、暗闇に居るせいで、目はいつの間にか、暗闇の住人の顔を捉えていた。 綺麗な卵型の輪郭に少々垂れ目。高い鼻筋。優しそうに微笑む少し薄めの唇。 髪の毛は肩に付きそうなぐらい長い金髪の髪、しかし毛先はぴょんぴょんと跳ねている。 左側の一束は茶色で着色されており、その髪型で、身だしなみにとても気を使っているのだと伺える。 ただでさえ、垢抜けていて普通には見えないが、一つ、普通の人と違うところをあげるとすれば。 「顔に…傷…。」 そう。彼には左頬に大きな十字の傷があるのだ。 それ一つで、美しい顔が台無し、と言う訳ではないが、その傷一つで「殺し屋」や「密薬売買人」など、素敵な自由業だと言うことが丸分かりである。 光夜はその傷を見つめると、ゆっくりと手で触れた。そっと、大事なものを扱うように優しく撫でる。 そうしていると、男は触れてくる光夜の手を、優しく静止した。 「参りましたね…。」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加