逃亡者

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「まず、その服装をなんとかしろ。」 「え?」 和樹は部屋のクローゼットから服を次々と出し、乱暴に湊へ投げた。 突然の事に湊は投げられた服を掴むことなく立ち尽くしていた。投げられた服達は次々と床に落ちていく。 「…何ボケっとしてる。早く着替えろ。」 「…この服目立つかなぁ?」 「お前は街中をパジャマで歩き回るヤツを見た事あるか。」 「…ないですけど。」 そう呟くと湊は渋々着替え始めた。 「…ねえ。」 「今度は何だ。」 「何で見てんのさ。」 湊は恥ずかしそうに頬を赤く染める。それもそのはず、湊の着替えを和樹が凝視していたのだから。 「どこを見ようと俺の勝手だろう。」 「いやいや、そういう問題じゃなく。」 「…黙って着替えてろ。」 「あ、もしかして和樹…そっち系の人?または変態?」 「黙れ。」 「ゔ…怖いなぁ。」 湊は再び着替え始めた。その間も和樹は湊を見ている。…着替えにくい。 「どお?」 数分後。湊はカッターシャツにジーンズの服装に着替えた。和樹の周りをぐるぐると回りながら言った。和樹はゆっくりと頷き、口を開いた。 「…お前の服は長袖ばかりだな。暑くないのか。」 「ふふ、和樹も変な事を聞くね。…暑くないよ。」 「…そうか。」 湊は笑いながら袖のかかった腕を撫でる。 湊が何故、長袖の服しか着ないのか。和樹はわかっていた。 湊が着替えている時ー…見てしまったのだ。 湊の腕に残された 無数の注射の後を。 「…次は下に行って、何か武器になりそうなものを探す。行くぞ。」 「はーい。」 和樹は複雑な気持ちになった。
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