284人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
階段を下り、一階に着くと二人はまず台所へ行った。
「武器って言えば…包丁くらいしかないけど、いいかな?」
「包丁は使いにくい。果物ナイフくらいでいいだろう。」
和樹は引き出しの中から果物ナイフを出し、湊に渡した。
「…僕が持つの?」
「お前も何か持っておいた方がいいだろう。」
「それもそうだね。」
湊は果物ナイフをズボンのポケットに押し込んだ。続けて冷蔵庫の隣の戸棚を開ける。
「それとね、スタンガンもあるよ。じゃーん。」
湊は戸棚の奥からスタンガンを二つ取り出し、一つを和樹に渡した。和樹は驚いた表情で湊を見る。
湊は和樹の心境を察したのか、笑いながら言った。
「護身用に父さんがくれたんだよ。…家にほとんど居ることがなかったから、僕は使わなかったけどね。相手を怯ませるには十分でしょ?」
「…ああ。これは使える。」
「でも、さすがに拳銃まではないよ。一般人が持つのは犯罪だしね。」
「…それくらいわかる。それに、拳銃は好かない。素人が扱うと肩を痛めるしな…。」
「…ところでさ。」
湊は冷蔵庫を開け、振り替える。
「何か食べない?僕、お腹がすいたよ。」
「そんな暇はない。」
「これから飲まず食わずで警察から逃げ切れるとでも?」
「…。」
確かにそうだが…。俺には一刻も早く確かめなければならない事がある。
湊は和樹の返事を聞かず、電子レンジの中にパンを入れ焼き始めた。コップにはすでに牛乳が注いである。
「…おい。」
「え?牛乳は嫌い?ダメだよ、大人が好き嫌いしちゃ。」
「そういう事じゃない。」
「わかってるよ。暇がないんでしょ?ならせめてパン一枚くらい、いいじゃないか。いざとなった時、腹が減ってたら戦はできないよ。」
「…わかった。」
和樹はため息をつき、椅子に座った。湊も向かいに座る。
「あっ。そうだ目玉焼きとソーセージも!和樹も食べるでしょ?」
「…好きにしろ。」
なんというか
よく喋る“人質”だ。
最初のコメントを投稿しよう!