逃亡者

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階段を下り、一階に着くと二人はまず台所へ行った。 「武器って言えば…包丁くらいしかないけど、いいかな?」 「包丁は使いにくい。果物ナイフくらいでいいだろう。」 和樹は引き出しの中から果物ナイフを出し、湊に渡した。 「…僕が持つの?」 「お前も何か持っておいた方がいいだろう。」 「それもそうだね。」 湊は果物ナイフをズボンのポケットに押し込んだ。続けて冷蔵庫の隣の戸棚を開ける。 「それとね、スタンガンもあるよ。じゃーん。」 湊は戸棚の奥からスタンガンを二つ取り出し、一つを和樹に渡した。和樹は驚いた表情で湊を見る。 湊は和樹の心境を察したのか、笑いながら言った。 「護身用に父さんがくれたんだよ。…家にほとんど居ることがなかったから、僕は使わなかったけどね。相手を怯ませるには十分でしょ?」 「…ああ。これは使える。」 「でも、さすがに拳銃まではないよ。一般人が持つのは犯罪だしね。」 「…それくらいわかる。それに、拳銃は好かない。素人が扱うと肩を痛めるしな…。」 「…ところでさ。」 湊は冷蔵庫を開け、振り替える。 「何か食べない?僕、お腹がすいたよ。」 「そんな暇はない。」 「これから飲まず食わずで警察から逃げ切れるとでも?」 「…。」 確かにそうだが…。俺には一刻も早く確かめなければならない事がある。 湊は和樹の返事を聞かず、電子レンジの中にパンを入れ焼き始めた。コップにはすでに牛乳が注いである。 「…おい。」 「え?牛乳は嫌い?ダメだよ、大人が好き嫌いしちゃ。」 「そういう事じゃない。」 「わかってるよ。暇がないんでしょ?ならせめてパン一枚くらい、いいじゃないか。いざとなった時、腹が減ってたら戦はできないよ。」 「…わかった。」 和樹はため息をつき、椅子に座った。湊も向かいに座る。 「あっ。そうだ目玉焼きとソーセージも!和樹も食べるでしょ?」 「…好きにしろ。」 なんというか よく喋る“人質”だ。
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