目的とは

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明らかに矛盾している。 「何で和樹なの?改札を通ったのは克樹さんのはずでしょう?ホームには克樹さんと里菜さんしか居なかった。…犯人は克樹さんのはずでしょう?」 「普通に行くとな。だが、監視カメラに写っていたのは俺だった。ー…いや、正確には俺のフリをした克樹だ。」 「フリ…って。」 「音声も残されていて、改札を通る時に里菜は“和樹”と呼んでいた。 そして、里菜がホームから突き落とされた時にホームに残された里菜のバックからも俺の指紋が検出された。」 「…嘘…!」 「まあ、それらの証拠から俺は容疑者として取り調べを受けた。俺はもちろん否定した。それは俺じゃなく、克樹の方だとな。 だが、克樹には完璧なアリバイがあった。事件の起きた時間帯、克樹は仕事の同僚と秋田に帰省していたんだ。 …一方俺はその時間帯、自宅でまだ夢の中。寝ていたんだ。…だがそれを証言してくれる者はいない。 俺は一人暮らしだからな。」 …完璧なアリバイを持つ弟と比べたら立場は圧倒的に不利だ。 湊は息を飲んだ。 「…克樹さんと…和樹の区別の方法はないの?」 「あるさ。克樹にあって俺にない、口元のほくろ。…俺も取り調べの時それを指摘したが監視カメラにほくろらしき物は写っていなかった。」 「そんなっ…!ほくろなんて隠す方法はいくらでもー…!」 「確かにそうだ。…だが、警察は俺を信じてはくれなかった。証拠と証言が必然的に俺を犯人に仕立て上げたのさ。…皮肉なもんだろ?」 俺の名前を呼んだ里菜。 バックに残った俺の指紋。 監視カメラに写らなかった双子の唯一の違い。 そしてー…。 自分は犯人じゃないと言える事実が何もない俺と 完璧なアリバイを持つ克樹。 「…追われている理由は、それだったんだ…。」 「ああ。俺は克樹を捜し出さなければいけない。」 「…捜し出してどうするの?」 「克樹に自首するよう、説得する。何故、俺のフリをしたのかも聞かなければならない。…大体理由は決まっているがな。」 「…おとなしく自首なんてするわけないよ。克樹さんはっ…実の兄を警察に売ったんだよ!?」 「仕方ないさ。」 和樹は切なげに笑った。
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