小さくて、儚い命

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次の日、僕はすぐに病院へ向かった。 「こんにちは。キタロウいますか?」 「ああ、昨日の子キタロウっていうんだ。飼い主は君なんやな」 先生が優しく言った。 「いや、僕はお母さんなんや!」 僕は強い口調で答えた。 「そうかそうか、じゃ息子さんはこちらですよ。」 先生は微笑みながら僕を案内してくれた。 キタロウは小さなオリの中にいた。相変わらずうずくまっていた。 「…キタロウ、ごめんな。僕気付かへんかった」 「キタロウ君は今病気と一生懸命戦ってるんやで。だから君も一生懸命応援したるんやで」 「うん。一生懸命応援する!だって僕お母さんやもん。頑張れ!キタロウ!」 先生はうんうんとうなずきながらその場を離れた。 僕はしばらくそこにいたが、先生に帰る様に言われたので仕方なく帰った。 次の日、病院に行こうとすると雄介が遊びに来た。 僕が事情を説明すると、雄介も一緒に来る事になった。 …キタロウはまだうずくまっていた。 「キタロウは今病気と戦ってるんや。だから僕も毎日来て応援するんや」 僕は雄介に強い意志を伝えた。 「…じゃあ俺も応援するわ。」 猫が苦手だった雄介も、キタロウの事は心配だった。 「けど…こんなオリの中でほんまに元気になるんかな?」 雄介がぼそっとつぶやいた。 それは僕も少し思った。けど、お父さんに触ったらあかんと言われたので先生に任せていた。 次の日も、キタロウはうずくまったままだった。 そして…次の日も…。 僕はもう限界だった。 僕は先生にキタロウに触りたいとまくし立てた。 先生は少しだけならとオリを開けてくれた。 僕はキタロウをそっと抱き抱えた。 「キタロウ、キタロウ。」 僕はそっと呼びかけた。 ジリリリリー、ジリリリリー 不意に病院の電話がなった。先生ははいはいと返事しながら電話の方へ走っていった。 その時、僕の脳裏に昨日の雄介の言葉がよぎった。 (こんな狭いオリの中やから全然元気にならへんのや) 僕は意を決した様に立ち上がると、キタロウを抱えたまま全速力で走りだした。
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