僕がお母さん

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「ただいま~」 と、僕は玄関を勢いよく開けいつにないテンションで帰宅した。 すると、お母さんが 「遅かったやん!どこおったんな!」 と、少し怒った声で出迎えてきた。 「雄介くんの家でゲームしとった」 僕はとっさに嘘をついた。何故かお母さんにキタロウの事を言うのは出来なかった。 「雄介くんの家に迷惑かけたらあかんよ」 と、お母さんが言った。 「大丈夫、おとなしく遊んでるから」 「ほんまかいな…」 お母さんは少し心配性だった。 それから、毎日僕はお化け屋敷に通った。 キタロウが首をかしげる仕草や、猫じゃらしに飛び付く姿。キタロウの行動の一つ一つが、たまらなく愛しくそして大好きだった。 猫が苦手な雄介はたまにしか来なかったが、徐々にキタロウに触る事が出来る様になってきた。 あっという間に時は過ぎ、もうすぐ夏休みがこようとしていた。 この頃から、キタロウは僕についてくる様になっていた。 「キタロウ、あかんて~。僕お母さんに怒られるやんか」 「ミャー」 キタロウは首をかしげながら僕を見上げる。僕はその度にキタロウを家へ連れて帰りたい衝動にかられた。 しかし、僕はぐっとこらえてキタロウを抱き抱えると、お化け屋敷の中に作ってある段ボールで出来たキタロウの家に置いて衝動を振り払うかの様に走るのだった。 「ミャー、ミャー…」 だんだん小さくなってゆくキタロウの声は、とても悲しげだった。 そして…さらに何日か過ぎたある日。 僕はまたいつもの様にあのお化け屋敷に行き、キタロウと遊んでいた。 そして、遊び疲れたのかやがてキタロウはすやすやと眠ってしまった。 僕は起こさない様にそっとお化け屋敷を後にして、家路についた。 キタロウは寝ているので僕は普段通り歩いて帰った。 家に着くと、お母さんが洗濯物を取り込んでいた。 「ただいま、お母さん」 「おかえり。今日は早かったやん。雄介くんと喧嘩でもしたん?」 お母さんは少し意外そうだった。 「いや、そんな事ないで」 僕はお母さんを手伝いながら答えた。その時だった。 「ミャー」 とても聞き慣れた、そして愛しい声だった。
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