僕がお母さん

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「キタロウ!」 僕は慌てて駆け寄った。 「ついてきたんか!あかんってゆうたやろ?」 「浩樹!どうしたん?その猫?」 お母さんが聞いてきた。 「えっとな、祭の帰りにお化け屋敷で見つけてな、それからごはんあげたり一緒に遊んだりしとったんや。かわいいやろ?」 僕は少々期待をしながら質問に早口で答えた。しかし 「かわいいけど、家では飼われへんよ!」 やはり、期待通りにはならなかった。 僕はお母さんを説得しようとした。 「なんで?すごくかわいいやん。まだ子猫やし、僕頑張って育てるから…」 「その子猫にもお母さんおるやろ?お母さん心配しとるやろ?帰したげなあかんやろ!」 「キタロウは一人や!お母さんおらへんのや!だから僕がお母さんなんや!」 「そんなん無理や。あんたすぐ飽きるやろ!猫は子猫のうちはかわいいけど、大きくなってくるとわがままで生意気になってくるんやで」 「キタロウは違う!」 「い~や、可哀相やけど家では飼えへんから、元おったとこに返してき!」 「もうええわ!僕が一人で育てるわ!」 所詮、僕がお母さんを説得する事など無理であった。 僕はキタロウを抱えて走りだした。あのお化け屋敷に向かって… 「お母さんなんかあてにならへん!僕がキタロウのお母さんになって面倒みたるからな」 僕は 走りながらキタロウに話しかけた。 キタロウはただ目を大きくして僕を見ていた。 ちょうどその頃、お父さんが仕事から帰ってきた。 「どうしたん?お母さん。そんな顔して」 やれやれといった顔をしているのを見てお父さんが聞いた。 「浩樹が、近所の空き家で子猫に餌やったりしとったらしくて、その子猫を飼いたいって言うからあかんってゆうたんやけど、じゃあ一人で面倒みるってゆうて走って行ってもたんや。…も~ほんまにあの子は…」 お母さんは肩をすくめながら答えた。 「ふ~ん、…ええやんか、猫ぐらい。僕は好きやけど?」 「何ゆうとんな!最初は世話してもいずれ飽きて私が世話する事になるんやで!それに、猫飼うにもタダじゃないし壁とかめちゃくちゃにされるし…かわいいけどそれだけで飼う訳にはいかんわ」 お母さんは一気にまくし立てて家に入っていった
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