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エピローグ
時は流れ、僕は大人になった。
今、こうして思い出してみると、今の自分があるのもキタロウのおかげだと思う。
あれから、猫を飼う事はなかったが、誰に対しても分け隔てなく優しく出来る様になった。
そして、成人になった今も、あの頃の友達と仲良くやっている。
高校を卒業した後、僕はすぐに就職した。
大手ではないが、地元のしっかりとした会社だ。
そして、それはある日の事だった。
その日は急に残業になった。おかげで雄介主催の飲み会に遅刻する事になった。飲み会といっても何故か我が家でする二人だけの物だった。
僕は急いで仕事を片付け、帰路についた。
そして、未だ空き家状態のお化け屋敷の前を通った時だった。
「ミャー」
猫の声がした。
僕はまさかと思い、お化け屋敷の中へ入って行った。すると…
子猫がいた。
黄色のしましまで目が大きくとてもかわいらしい子猫だった。
「お前、かわいいなあ。お母さんはおらんのか?」
「ミャー」
子猫は返事をすると僕の足元にすりよってきた。
僕は思わず抱き抱えた。
そして、そのまま家路についた。
家に着くと、雄介が首を長くして待っていた。
「浩樹!おそいぞ!」
「ごめんごめん、それより見てみ…ほら」
僕は子猫を雄介の顔の前に突き出した。
「うわっ、猫やんけ!」
雄介は相変わらず猫が苦手な様だった。
「どこにおったと思う?なんとあのお化け屋敷やで!しかもよくみたらそっくりやろ」
僕は笑顔で言った。
「たしかに、ほんまやな。よう似とるな」
雄介は少し引きながら答えた。
「今回はお母さんがなんとゆおうと飼う事に決めたんや」
その頃両親は、町内会のカラオケ大会で仲良くデュエットしていた。
「で、名前は?」
雄介がニヤニヤしながら質問してきた。
「そりゃあもちろん…」
二人は顔を見合わせた。
「キタロウ!」
二人の声がユニゾンした。
その様子を、二代目キタロウは首をかしげながら見上げていた。
「これからよろしくな、キタロウ」
僕が話しかけると
「ミャー」
キタロウはまた嬉しそうに返事をした。
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