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猫屋敷は、予想以上に大きかった。平屋だというのに、屋根が高い。広さは、小学校の体育館程度はありそうだ。ここに住んでいる築宮瑞希という女性は、柳先生曰く独身で一人暮らしのはず、である。猫を飼っているとはいえ、一人では持て余す大きさだ。確かに、これは「屋敷」という呼称が似合う。
「大きいでしょ。何でも、築宮嬢の亡くなられた御両親が相当の資産家だったらしくてね。遺産相続ってスゴイよね。まだ二十七歳なのに」
「そんなに若い方なんですか? てっきり、老婦人だと思ってましたけど……」
「誰もお年寄りだなんて言ってないよ」
それはそうだ。私の勝手なイメージではないか。
家の大きさに対して、思っていたよりも玄関は小さい。柳先生が呼び鈴を鳴らして暫くすると、パタパタという足音が聞こえてきて、ガラリと戸が開いた。
予想外に、美人だった。濡れた黒髪に整った顔立ち。白い肌に、赤い唇が映える。白いワンピースに隠された体も、どうやら細く美しいらしい事が分かる。
「あの、ごめんなさい。今、お風呂に入っていたものですから」
鈴を転がすような声で、そう謝られた。成る程、髪が濡れているのはそういうわけか。
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