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「えっと、あなたが……柳先生、さん?」
「あ、いえ、私は違います。柳先生は……」
「僕です。先日は、突然お電話をして申し訳ありませんでした」
「え? あ、あの、ごめんなさい。私、とんだ間違いを……」
よく謝る女性だ。いつもこんな感じなのだろうか。ペコペコと頭を下げる様子も、非常に美しいと思えるのだが。
「え、あ、初めまして。私、この家の主人で、築宮瑞希と言います」
「あ、えっと、卓磨宏和です」
深々と頭を下げられたので、私も慌てて頭を下げる。柳先生にぶつかりそうになった。一通り挨拶が終わると、築宮瑞希は言った。
「えっと、じゃあ、どうぞ。自由にお探しになって下さって構いませんから。広い家ですけど、そんなに部屋があるわけではありませんので」
「有難うございます。確か、猫ちゃん達は殆ど、居間にいるんでしたよね?」
「あ、はい」
「じゃあ、分担しよう、卓磨君。僕は居間で猫ちゃん達の中に迷い猫がいないか探す。君は、それ以外の部屋を探して。写真、さっき渡したよね」
「え? あの、それじゃあ僕の負担が大きいのでは……」
そう言うと、築宮瑞希は慌てて靴棚の上に置いてあった紙を取って、私に渡した。
「あ、あの、ごめんなさい。忘れてました。これ、お役に立てばと思って。この家の平面図です」
それを見て、私は柳先生の言った役割分担に納得した。
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