再会【柳先生】

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「猫に関わる本を読むならね、夏よりも冬の方が良いと思うな、僕は」  一年と三ヶ月振りに再会した柳先生は、開口一番にそう言った。大学から帰る地下鉄の中。約束すらしていない再会であったにも関わらず、だ。それは、柳先生にしてみれば挨拶代わりなのだろうが、私にはそう受け取り難い。何故いきなり読んでいる本について訳の分からない批判を受けなければならないのか、理解出来ない。 「猫と冬の関係性については、概ね同意します。猫には炬燵が似合う。けれど、夏の伸びた猫も良いと思いますよ。春も秋も、それはそれで素晴らしい。ですから、猫に関する本を夏に読む事を、あなたに否定される謂れは有りません。第一、これは主人公の名前に『猫』と入っているだけで、猫に関する本ではありませんよ」  本を閉じて、表紙を見せる。柳先生はそれを見て、クスクスと笑った。 「相変わらず、卓磨君は理論的だね。けど、一々詰めが甘いよ。その本は猫に関する本じゃない、と言うのは、微妙に違うことくらい君も承知でしょ? 何せその本には、先輩が猫探しに関わる話が収録されてるんだから。それに、冬に読んだ方が良いのだって、今君が読んでいたページに関しては間違いじゃない。それ、クリスマスの話なんだから」
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