依頼【柳先生】

3/6
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
 段々私は、柳先生がどういう人物だったのかを思い出してきた。そうだ。このように、この人は自分勝手で他人をすぐに巻き込む癖のある、非常に迷惑極まりない人だったのだ。何と言う、傍若無人。  別に私も、この後特に用事が有ったわけでもなかったし、中学から高校まで付き合っていたにも関わらず、卒業以来一年半も音沙汰無しだった柳先生との再会は非常に嬉しかったから、仕事を手伝う事自体は構わない。けれど、それならせめて、仕事の内容くらい教えて欲しいものだ。何の説明も無く手伝えと言われても、返事に困る。 「えっと、その大荷物からすると、けっこう大変な仕事なんですか?」  私は、柳先生が背中に背負っているリュックサックを指しながら尋ねた。リュック自体は普通の大きさだが、何が入っているのか、パンパンに膨らんでいる。 「ああ、これ? んー、持ってみれば分かるよ」  そう言って、柳先生はリュックを下ろして私に放り投げた。慌ててキャッチをして、驚いた。予想外に、軽い。 「え? 何ですか? これ」 「ゲージだよ、ゲージ。籠。犬とか猫とか入れておく、あれ。他も色々入ってるけど、膨らんでるのはゲージのせいだから」 「えっと、じゃあ、仕事っていうのは……」 「ん。今回の仕事はね、―――猫探しだよ」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!