依頼【柳先生】

5/6

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「んー、まあ、そうなるとだ。可能性としては、誰かの家で飼われている、っていうのが一番高いでしょ。でも、これだけ張り紙してるんだから、気付かないのはおかしい。でも、もしその人が猫を大量に飼っていて、その中に紛れ込んでいるとしたら。それなら、充分有り得るよね」 「それが、今から行く猫屋敷なんですね?」 「ん。そういう事」  猫屋敷。勿論、ただの呼称だ。近所の人がそう呼んでいる。ただそれだけの事。木造平屋で、敷地面積は結構あるらしいから、屋敷と呼ばれるのに不足は無いという。そして、奥様方の話によると、その家には百匹以上もの猫が住んでいる、という噂らしい。つまり柳先生は、そこに当たりを付けた、というわけだ。  しかし、地下鉄を出てから、かれこれ二、三十分は歩き続けている。まだ目的地は遠いのだろうか。 「……あの、随分歩いてますけど、まだ着かないんですか?」 「あと十分くらい」  ……まだ遠かった。何となく、さっきの駅で降りなくても良かったような気がしてきたのだが、気のせいだと思いたい。 「いやー、でもねー、猫は可愛いよね。流石に百匹はいないらしいけど、いっぱい居る事には変わりないらしいからね。役得、役得」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加