依頼【柳先生】

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 成る程。会った時から随分楽しそうなのは、猫と触れ合えるからか。私は、柳先生がかなりの動物好きであった事を思い出した。 「猫と言えばね、最近五ヶ月ぶりくらいに四コマ漫画誌を買ったんだけど、今思うとあれ、猫の話が多いよね。猫と喋ったりとか猫が喋ったりとか、そういうの、僕は結構好きな」  以下、割愛。というより、そこから約十分間、柳先生は四コマ漫画と猫の話を楽しげに語って、よく分からなかった私は、適当に相槌を打っていた。柳先生の話はよく脱線するので、尚の事理解しがたくなる。何故か、猫と話せる女子高生の話が大学生の話に変わって、猫と話せる少女の話が赤ん坊の話に変わって、丸い猫の話が彫刻家と大和撫子の話に変わって、公家眉猫の話が小学生と教師の恋愛の話に変わって、人になりたい猫の話がラッコの話に変わった辺りで漸く、同じ作者の別の作品の事だと分かったのだが、それでもやはり雰囲気に合わせて頷く以外に無かったのだ。正直、その殆どを知らなかったのだから。結局、その十分が長かったのか短かったのか分からなくなるような状況だったが、科学が存在しないかもしれない話にまで行った辺りで猫屋敷に到着したのは、まあ、良かったと言うべきなのだろう。
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