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いくつもの椅子や机が、耳障りで不快な音をたてている。
机と椅子から開放され、自由になった子供達。
友達と約束を交わしながら走って教室を出る男子もいれば、一人寂しくランドセルを背負い、教室を出ていく女子もいる。
「なあシキ、今日お前の家行っていいか?俺ん家今叔母さん来てるからゲームさせてくれないんだよ」
頼むと言って顔の前で掌をあわせる翔。
翔とは幼稚園の頃からの付き合いで、母親同士も仲が良い。
「いいけど、今日父さんが帰ってくるからそんなにできないよ」
ランドセルを背負い、周りの奴らと同じように教室を出る。
先々歩くシキを、少し小走りで追いかける翔。
「珍しいなシキのおじさんが帰ってくるなんて」
シキの父、圭介は大阪で働いているため単身赴任をしている。
帰ってくるのはお盆と正月ぐらい、それ以外は滅多に帰って来ない。
だが何故か一週間前に突然電話が入り、家に帰ってくるというのだ。
「明日平日なのになんで帰って来るんだ?」
「知らない」
近道となる、狭い脇道を通り、大通りに出る。
道行く人達の隙間を抜けながら走って行くとシキの家に着いた。
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